『ヌーヴェルヴァーグ』ってなんぞや?

よく映画通な人が「ゴダールのジャンプカットは革命なんだよね。カメラを外に持って行って自由な映画を撮った、これが映画の革命なんだよ!ヌーヴェルヴァーグ!」とか、「ルイ・マルって監督がヌーヴェルヴァーグの中心的な人物でね・・・」とか、映画通な人が映画通を気取るためによく出てくる『ヌーヴェルヴァーグ』という言葉。

でも、こんな内容の映画話を聞いてても、よく分かんないですよね(笑)。そもそも何がスゴいのかハッキリしないし!(というか何が言いたいのかよく分からんw)

という訳で、そんな映画通気取りな人をギャフンと言わせる事が出来ちゃう、簡単に分かる『ヌーヴェルヴァーグ』講座ぁ〜♪パチパチパチ!

ヌーヴェルヴァーグ』ってそもそもどういう意味なんでしょうか?これはフランス語で「新しい波」という意味だそうです。言い換えれば新しい世代の映画と理解しても良いかもしれません。

時は1950年代、映画の国ハリウッドではミュージカル映画が全盛期を迎えており、また映画のネタが無くなっていた時期でもあります。この頃の映画は1990年代のアクション映画で、総製作費何百億!と争っていた時期と非常に似ており、折しも50年代も、「このキャストでミュージカルだぜ!こんなにセットにお金をかけたんだぜ!」と争っていた時期です。

しかし50年代後半にもなると、そういった競争も陰りを見せ、半ばネタ切れ感がある中にアルフレッド・ヒッチコック監督やハワード・ホークス監督などの職人的な見せ方をする映画が普及してきました。

ですが、当時の観客の反応としては「面白いけどさぁ〜、スゴい踊りや素敵な歌があるわけでも無いしぃ〜、アカデミー賞取る程の作品じゃない、娯楽作品だよねぇ〜。」みたいな評価だったそうです。おぉ・・・、今では考えられない低い評価ですね・・・。

そして舞台はヨーロッパへ!

フランスでは2つの映画雑誌がお互いに「これこそが正しい映画だ!」「この監督こそが映画なんだ!」と言い争っていました。映画雑誌『ポジティフ』と『カイエ・デュ・シネマ』です。

そして、この雑誌で半ば2ちゃんねるのように、互いに映画批評をしていた人達が、後の『ヌーヴェルヴァーグ』と呼ばれる監督達です。けっこう意外ですよね。映画を撮った事も無い素人が、自分の好きな映画監督を語って、口喧嘩してただけなんです (笑)。

その中でよく争われていた内容というのは「ミュージカル映画はもう終わりだ!ヒッチコックハワード・ホークスは高度で素晴らしい映画を撮っているのに!この低評価はなんなんだ!あれはただの娯楽作品なんかじゃないぞ!映画の革命なんだ!」という動きが起こってきます。

ちなみに、この好きな映画を主張し合う運動が日本語でいう『作家主義』という映画用語です。日本でヌーヴェルヴァーグを1番知っている、映画批評家蓮実重彦氏曰く、作家主義というと、どうも自由気まま、好き放題に作った作品が作家主義的映画と誤解されているが、そもそもフランス語の翻訳に難があるらしく、まぁ、こういう一連の主義主張の運動こそが作家主義という本来の意味なんだそうな。

おっと!話を戻して・・・、しかし、こんなフジテレビデモみたいな運動やってても、所詮は映画を撮った事もない素人映画評論家。しかも相変わらず、ハリウッドでは当のヒッチコック監督達の評価は低いまま・・・。

そこで、この映画評論家達は自らが立ち上がって映画を撮り、「俺達の大好きなヒッチコックはスゴイ!って事を世界に認めさせよう!」と立ち上がったのです・・・、ハイッ!これが『ヌーヴェルヴァーグ!』

ジャン・リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」なんかがよく例えで出てきます。

・ジャンプカットなどの映画界において新しい技法
・それまでハリウッドでのセットでしか作られない映画が、フィルムの質(感度)の向上に伴い、自由なロケ撮影映画が出来た

などなど・・・(だいたい、出てくる主な内容はこの2つ)。

ヌーヴェルヴァーグ』運動によって作られた映画が、結果として、今までに無い新しい映画が出来た事は事実なんですが、本来の流れはこのような一連の動きによって生まれたんだよって事を考えると、そんなに難しい話じゃない事がよく分かります。

その当時のヌーヴェルヴァーグ運動を起こしてた人達が非常にインテリに映画を語ってたので、21世紀に生きている僕らは、何か難しい映画なのかなぁ、映画通じゃないと分からない映画なのかなぁと思いがちですが、タネを明かせば、実は何てことは無い (笑)。

ただ、映画の歴史として考えた時、ミュージカル映画が既に飽きられ、もう映画で表現出来る事は無くなってしまった時に、ヌーヴェルヴァーグアメリカン・ニューシネマによって、新しい映画が再び生まれてきた事を考えると、ヌーヴェルヴァーグの人達は偉大な功績が故に、映画が好きな人達はやっぱり、色々語りたくなるのかもしれません。

あと、これは個人的に思う事。

21世紀を生きる、映画が好きな人達を見てると、ヌーヴェルヴァーグ時代の頃と比べて映画を語るレベルが低いように個人的に思っています。もし、21世紀の今にゴダールがバリバリの若者だったら・・・・、

「えっ!?カメラ超安いじゃんww  スマホでも綺麗に映像撮れるじゃんww youtubeで世界中の観客に見せれるじゃんww」

こんな感じで映画を撮りまくってたんじゃないかなぁと。僕は映画仲間同士でこんな事を妄想し、若い頃に自分たちで映画を撮りまくってました。しかし、今の映画が好きな若い人達を見ると、どうもそういった熱気のようなモノを持ってる人が少ないと感じます。

まぁ、そういう意味ではアニメってホントにスゴイ。ニコニコ動画で自主制作したアニメを見ると、もう日本は映画じゃなくってアニメ!という時代になってるのかもしれません。